H.P.B.著作の和訳を試みる & 関連の話題 blog

ヘレナ・ペトロヴナ・ブラヴァツキー (1831年 – 1891年) は、近代神智学を創唱しました。・・・主に彼女の代表作である「シークレット・ドクトリン」の和訳を試みています。

【秘密教義のオカルティズム】 ー 8章「エノク書」、エノクについて・・・その4 

 <原書・初版1897年発行>

 

  ーー象徴的「エノク書」ーー

  

         シークレット・ドクトリンのオカルティズム

            (第3巻) ― 8章

 

                     H.P.ブラヴァツキー 原著

                                                        アニー・ベサント   編著

                <[角括弧]はアニー・ベサントによる追補>

                  <(各単語) はaquamarithによる追補>

 ◎象徴的「エノク書

 我々が、エノク或いは彼の不滅の名声を残す人が“罪人の程度”による処刑を、異なる幾つかの週に執行したことに言及して、この第4回目( 第四人種 )の間に “あらゆる不信心な行為は、全地球から消えさるだろう”と言っていることから、それが「聖書」の一回だけの「大洪水」にあてはまることはありえないし、まして「捕囚」もおそらくそうであろう。*(21)

 

 したがって、「エノク書」はマンヴァンタラの五つの「人種」の範囲を網羅している、最後の二つの人種に関しては若干の示唆を仄めかしている、それは“聖書の予言”ではなく単に東洋の「秘密の書」から取り出した事実を含むことになる。 編者は、さらに、つぎのように告白する。

 先行する6つの詩句、すなわち第13、15、16、17、18番の詩句は、写本の中にあった第19章の14番目と15番目の詩句の間の部分から取られたものである。*(22)

 

 この恣意的な転写によって、彼はより多く混乱を起こし、さらに混乱をもたらした。それでも彼は「福音書」と、「旧約聖書」の教義でさえ「エノク書」からそのまま取っている、なぜならそれは天に太陽があるのと同じように明白だからであり、彼の言っていることは極めて正しいのである。

 「モーセ五書」全体は与えられた事実に調和的に適応されていた、だがこれらが原因で、キリスト教徒は「エノク書」を、彼らの正典として正当に認めることを後になって拒否していた、同じくヘブライ人たちも「この書」を、彼らの正典としての地位を与えることを拒否した。

 

 しかし、使徒ユダと多くのキリスト教神父たちが、この書を啓示や神聖な書としている想定外の事実は、初期のキリスト教徒がそれを受け入れたという立派な証拠である – 例えば最高の学識者アレキサンドリアのクレメンスなどである – キリスト教とその教義は現代の後継者たちとは全く異なる観点によって理解されており、「キリスト(救世主))」はオカルティストだけが正しく認識できるとしている。

  初期「ナザレ派」や、ジャスティン殉教者(聖ユスティヌス)の呼び方に従えば、「キリスチャンたち」とは「イエス」の支持者や秘儀参入した本当のキレストスとキリストスのことであった。特に西側の現代キリスト教徒は、ローマ教皇派、ギリシャ正教徒、カルヴァン主義者またはルーテル教徒であっても、キリスト教徒、イエス、すなわち「キリスト  (救世主)」の信奉者とは到底呼ぶことはできない。

 

 このように「エノク書」は、完全に象徴的である。それは人類の「諸人種」および彼らと「神々の系譜」との初期の関係史にかかわるものであり、そしてその象徴は天文学上および宇宙の神秘と混交されていた。

 ただし、ノアの時代の記録の中の一章(パリとボドリアン図書館の両方の写本)すなわち、10項目(セクション)のうちの58章が行方不明である、従ってこの章が改作されることはあり得ないし、それは消失したのに違いない、毀損された断片が後にのこされたのである。

 

 雌牛たちの夢は、黒、赤、そして白い子牛たちの、最初の諸人種との関係と、彼らの区別と滅亡に関するものである。第88章では四天使のうちの一名が“白牛たちのところへ行って、彼らに神秘を教えた”、そしてその後、生じたその神秘が “人になった”それは   (a) 原初アーリア人から進化した最初の集団   (b) いわゆる“「両性具有者」の神秘”に言及したのであり、現在あるような、最初の人間種族の誕生に関係している。家長制度の国インドで、通過や、雌牛のなかを通り抜けての再生として知られている儀式、いわばブラフマンになることを望んでいる低いカーストの人々が受けなければいけない儀式は、この神秘から始まった。「エノク書」の上に挙げた章を注意深く慎重に読ませれば、いかなるオカルティストであっても、キリスト教徒やヨーロッパの神秘家がそこで(その章で)「キリスト  (救世主))」をみるように、それが“羊の主”であるとみなす、サンスクリット語での“羊の主”の名はあえて明かさないが、「司祭で犠牲者」であることがわかる。

 

 また、西洋のキリスト教徒は“羊や狼たち”をエジプト人とイスラエル人だと連想する、これらの動物たちはインドやエジプトで新受洗礼者に課せられる試練や秘儀参入時の神秘に実際に関係する、そして最も恐ろしい刑罰は、“狼たち” といわれており、それは人々が招く「選別」と“完璧”な知識の為の秘儀を誰に対しても見境なく明らかにしてしまうことと関係がある。

 

 後の改竄つまり*(23)、キリスト教徒がそれぞれの章のなかで、モーゼとイエスと大洪水に関する三つの預言を作り上げたこと、それは間違いである、なぜなら実際はそれが直接アトランティスの滅亡と容赦無い罰則に関係していたからである、“羊の主”とは、カルマのことであり、地球上の最高の秘儀者は“司祭長”であった。

 

 そして羊の統率者が、貪る猛獣の餌食にされてしまわないように救ってほしいと嘆願するエノクに対して彼は言う:

 

 私は自らの面前で詳細な説明をしよう... どれ程多くを彼らは破壊へと引き渡したのか...私が命じたように彼らが行動するかはわからない、いったい彼らは何をするのであろうか。

 

 だがこれについて彼らは無知であろう、汝は彼らにいかなる説明をもしてはならぬ、汝が彼らを叱責してはならぬ、だが季節ごとに、彼らが行った全ての破壊の説明が必要だ。*(24)

 ... 彼は沈黙したまま眺めた、彼らが貪り食われ、呑み込まれ、運び去られるのを見て歓喜し、彼らが食料としてあらゆる獣の支配下に置かれていく様子を…*(25)

 

脚注———————————————

*(21) 前掲書、p42, 7, 11, 13, 15.

*(22) 前掲書, p.152注

*(23) それらの改竄や変更は、キリスト教徒によるもので、これらはすべての使徒の数と種族と長老たちの数に関するものであり、特に番号11と12の数字が入っている場合が殆どである。「エチオピア語」文書の翻訳者である大司教ローレンスは、パリとボドリアン写本の両方の文書内容が異なるときは、一般の常識としてそれらを“翻訳者の間違い”であるとした、しかしそれは違う。我々が心配するのは、殆どの場合それが間違いないからである。

*(24) 前掲書、88章 99,100

*(25) 前掲書、p94pこの経過は、この後示されるが、非常に注目すべき発見へと導いた。

 

つづく。

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 ☆原書として、Kessinger Pub Co【Occultism Of The Secret Doctrine】 を参照しました。

 

 ☆キリストをWikipediaから引用・・・キリストは、ヘブライ語のメシアのギリシア語訳 Χριστος (Khristos クリストス、フリストス)からの、日本語における片仮名表記。基督、クリスト、クライスト、ハリストスとも表記される。

・・・だそうです、今回の翻訳は日本語として定着している「キリスト教」や「イエス・キリスト」という表記に合わせて「クレストス」や「クリストス」ではなく「キレストス」や「キリストス」と翻訳しました。

 

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