H.P.B.著作の和訳を試みる & 関連の話題 blog

ヘレナ・ペトロヴナ・ブラヴァツキー (1831年 – 1891年) は、近代神智学を創唱しました。・・・主に彼女の代表作である「シークレット・ドクトリン」の和訳を試みています。

【秘密教義】 第2巻 第2部ー21章 エノイキオン — へノック(その2)  

 <<1888年に出版された H.P.ブラヴァツキー の著作>>

     ーーアデプトは死んだ、しかし生きている。ーー

 

        シークレット・ドクトリン【秘密教義】 

         第2巻―第2部 ―21章  

                      H.P.ブラヴァツキー 著

                                                   aquamarith (ハテナ名)  訳

 

 ◎アデプトは死んだ、しかし生きている。

 エリヤは生きたまま天に持ち挙げられた、同じようにカルデア人占星術師ヘア・バニ (Hea-bani) は、イシュバールの宮廷で、彼の支援者であるヘア神によって天に持ち挙げられた、ヘア神はエホバでありエリヤ(ヘブライ語では“ヤー・神”、ヤハウェ、の意味 )である、エリフもやはり同じ意味を持つ。

 こういった単なる死や安楽な死は、秘教的な意味を持っている。内在的力と階級に達したあらゆるアデプトの象徴的な死は浄化であり、物質的な肉体だけは死んだが、まだ生きていてアストラル体で意識的な生活を送ることができる。このテーマの変種は終りがないが、秘匿された意味は同じである。

 

 パウロ書簡(ヘブライ人への手紙 11-5)に記されている“死を見ることのないように移された、あるいは“死を見ないようにされた(ut non videret mortem)”、このことは秘教的意味を持つが超自然的なものではない。 “エノクの年数と世界の年数を同じにする”(太陽年、365日)はエノクの聖書的な幾つかの手がかりに誤った解釈が与えられたのである、エノクは「救世主」と預言者「エリヤ」と同様に、反救世主を破壊し、最後に至福を到来させたのである ー すべての誤りがなくなり、真実の到来が神聖な “光の子たち”であるシシュタによって告げられ、偉大なアデプトの何人かは第七人種のときに戻ることを、秘教的に示している。

 

 ラテン教会は必ずしも論理的でも慎重でもない。“エノク書”を聖書外典だと宣言し、カジェタン枢機卿と教会の著名な別の人物を介して、聖典であるユダの書からであっても拒否を要求するほど離れていった、しかし啓示を受けた使徒は出所の怪しい文書であると言われているエノク書を引用して、このように神聖にしたのである。

 幸いにも、教義論の一部は、その時点で危険性を認めた。 彼らがカジェタンの決議を受け入れたならば、同様に4番目の福音書を拒絶することを強制されているのだろう、 全く同じように、聖ヨハネが文字どおりエノクとイエスの語った言葉から、全部の文章を借りたのだろう! (上記参照、副節§17. A、羊と強盗について。)

 

 “エチオピア語群文献の父”、ルドルフは、旅人ペーレスクによって示された様々なエノキアン写本を調査するよう委嘱され、マザラン図書館に“エノク書が、アビシニア語では存在したことがなかった”と断言したのである!更なる研究と発見のすべてを知っているかのような、彼のあまりにも独断的な主張は最悪だった。

 

 ブルースとルッペルは、数年後にアビシニアから同じ写本を見つけ出し、ローレンス司教がそれを翻訳した。 しかし、ブルースはそれを軽蔑し、その内容を嘲笑した、それは科学者達や他の人達も同様であった。 彼はそれを“グノーシス主義の作品”と宣言した。その翻訳には人々を“むさぼり食う巨人の時代”— が与えられていた・・・それは別の “黙示録”であり、別の巨人!のおとぎ話の一つである。

 しかし、それは良識ある評論家すべての意見ではなかった。ハンネバーグ博士は、エノク書をマカベア書の第三巻と同列だとして、聖書正典に最も近い一覧表の権威的な位置である先頭に置くのである。

 

 これは真に、“教授たちの意見が一致しないところであって. . .”

 

 いつもながら、彼らの意見は全く正しくもあり間違いでもあった。エノクを聖書的な特徴を持つ、ひとりの生きている人間と認めることは、アダムを最初の人と認めるようなものである。エノクは一般的な名称であり、すべての時代と時間であり、あらゆる人種と国であり、個人に広く使用されたことにより伝えられていた。

 

 これはハノック(エレドの子)についての見解に、古代タルムード研究家とミドラシムの教師たちは、概して合意しないという事実から簡単に推論されるかもしれない・・・・エノクは、神に愛され、天に生きたまま取られた偉大な聖者(即ち、地上でムクティやニルヴァーナに到達した仏陀のような聖者)であったと言われる一方で、他の人たちは、彼のことを妖術師であり邪悪な魔法使いであったと主張した。

 

 「エノク」あるいは「同等のもの」は用語として使われた、その意味は“千里眼者”、“神聖な智慧のアデプト”などであり、如何なる肩書(title)-擁護者の特徴の列挙に関するものではなく、後のタルムード研究家の時代であっても、そのように使われた。

 エリヤとエノク(古代遺物(Antiquities). 9. 2)についてヨセフスは次のように述べている、それは“神聖な書に、彼ら(エリヤとエノク)が誰も知らないうちに死んで姿を消したと記されている”それは、いわゆる人格が死んだという意味である、当時のインドのヨギたち、そして世界中のキリスト教修道士の幾人かでさえも、同じである。彼らは死んで人間の視界から姿を消す、すなわち地球上に存在する自分自身を消すということである。一見して比喩的な表現方法だが、文字通り真実である。

 

 “ハノックは、ノアに天文学的な計算、そして季節を算定する科学を伝授した” とミドラシュ・ピーカー・R. エリザー(cap. 8.)は述べる、そして他の者たちがヘルメス・トリスメギストスに伝授したことをヘノックに引用している、なぜなら、彼らの秘教的意味によれば、この二つは同一だからである。この場合の “ハノック”と彼の“智慧”は、第4のアトランティス人種*、そして第五のノアの周期に属している。† 

 

 この場合、両方とも根本人種を表し、現在と、それ以前の根本人種を表している。 他の意味をあげると、エノクは姿を消し、 “彼は神と歩いていたが、彼はなかった、神が彼を連れて行ったので”である、この寓話は、人々の間から神聖な知識と秘密の知識が消滅することを指している、“神”(またはジャヴァ・アリム- 高等秘儀の司祭、秘儀の司祭長)が彼を連れて行った、言い換えれば、エノクやエノイキオン、千里眼者たちの知識と知恵が、やがて預言者たちの秘密寺院やユダヤ人たち、異邦人たちの寺院に厳密に限られたものになった。

脚注 ———————————————

* ゾハールによると“ハノックは、アダムの世代に記された書を持っていた、そしてこれは、智慧の神秘である”と述べた。

† ノアは、エノクの智慧の相続人である、言い換えると、第五人種は第四人種の相続人である。

‡ イシス・アンヴェールド、第1巻、575頁、以下参照。

 

 つづく。

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 ☆個人的に興味があった章だけの記載です、素人の抄訳で誤訳もあるかと思います、不明な箇所は原著の頁を御覧ください。

 

 ☆原書として、Theosophical University Press版 【 The Secret Doctrine Vol.2】 を参照しました。

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