H.P.B.著作の和訳を試みる & 関連の話題 blog

ヘレナ・ペトロヴナ・ブラヴァツキー (1831年 – 1891年) は、近代神智学を創唱しました。・・・主に彼女の代表作である「シークレット・ドクトリン」の和訳を試みています。

【秘密教義のオカルティズム】 — 第9章 ヘルメスとカバラの教義、『カバラ』と『エノク書』など・・・(その2)

  <初版1897年発行>

   ーー “カバラ”と“エノク書”ーー

 

       シークレット・ドクトリンのオカルティズム

            (第3巻) ― 第9章

 

                     H.P.ブラヴァツキー 原著

                                                         アニー・ベサント  編著

                <[角括弧]はアニー・ベサントによる追補>

                         <[各単語] はaquamarithによる追補>

 

 ◎“カバラ”と“エノク書

「イシス・アンヴェールド」*(7)の記述の中に、読者は「ゾハール」の著者、偉大なカバリスト、サイモン・ベン・ヨカイに関して、ここで掲げられる以上の豊かな情報を見つけるであろう。彼は秘密の知識と 『ことば』 を確実に受け入れるメルカバーを所有することが知られていた、その為に彼の生命は危険にさらされ、荒野に逃げなければならなかった、彼は忠実な弟子たちに囲まれ12年間洞窟に住んでいたが、その場所で予兆と驚異のまっただなか亡くなった。*(8)

  

 彼の「秘密教義」あるいは彼の言う「秘密の智慧」の起源に関する教えは、東洋で見つかるものと同じであり、例外は惑星の聖霊たち、即ち大勢の長に対して彼は 『神』と名付けたことであり、神自身がその知恵を、特定の数の「選ばれた天使たち」に最初に教えたと言っているのである、一方、東洋の教義では、その言い方は異なっている、

次にそれを見ていく事にする。

 

 私たちの前に、神聖な「エノク書」とタロー [(Taro)タロット(カード)のこと] (ロータ)に関する統合的でカバラ的な研究文献がある。 私たちは、ある西洋のオカルティストの写本のコピーから引用する、そしてそれは、次のような言葉で始められていた、

 

 一つの「法則」、一つの「本質」、一名の「行為者」、一つの「真理」、そして一つの「ことば」しか存在しない。上にあるものは下にあるものに似ており、あるものすべては量と平衡の結果である。

 

  エリファス・レヴィの格言と、この三つからなる碑文は、東洋と西洋の間の「秘密科学」に関して思想の一致を示している、同じ写本で語っているのは、

 

  隠された物事の鍵は、聖域の鍵である。これは「神聖な言葉」であり、アデプトにオカルティズムとその神秘への最高の道理を与える。それは哲学と教理の真髄である。それは「アルファ」であり「オメガ」であり、それは光、生命、そして普遍的な智慧である。

 

 聖なる「エノク書」のタロー [Taro] 、またはロータ [(Rota)タローの逆読み] は序文であり、さらに次のように説明がなされる。

  この書による太古の昔は、時間という闇のなかで失われた。この書はインド起源のものであり、モーセの時代よりはるかに遡る。・・・それは最初、純金と高価な金属で出来ていたが、後になって分散された葉の上に書かれていた・・・それは象徴的であり、それらの組み合わせは「霊」のすべての驚異にそれらを適応させた。 時代を経て変化したにもかかわらず – 奇妙なものに対する無知には感謝するしかない – なぜなら、その原型や最も重要な原初の外観が保存されていたからである。

 

 これは現在「エノク」の「タロー」と呼ばれる「エノク」の「ロータ」である、ド・メルヴィルは、これは『邪悪な魔術』のために使われた手段であり、『大洪水時の破壊から逃れた金属板 [或いは複数の葉]』 だと仄めかし、カインに帰するものとした、私たちも、そのように理解したのである。この「大洪水」が『普遍的』ではなかったという単純な理由により、それらは「ノアの大洪水」を免れたのであった。

 

 そして、それは『インド起源』と言われる、なぜならアトランティス最後の拠点が最終的​​に破壊される前の、「第五根本人種」の「第一亜人種」であるインド・アーリア人に、その起源があったからである。しかし仮に、それが原初のヒンドゥー教徒によって創られたとしても、それが最初に使われたのはインドではない。その起源はもっと古く、雪に覆われた山脈であるヒマーレを越えてまで、その跡を辿らなければならない。地理学者達とキリスト教神学者達の双方が絶望したのは、それが誰も見つけることができない神秘的な地域で起こったたということである - その地域は、バラモンの「カイラサ」がある場所「スメール山[須弥山]」、そしてギリシア人によってパロパミサスに変えられた「パミール」、即ち「パールヴァティ」の場所で生まれた。*(9)

  今もなお存在するこの土地の周辺で、エデンの園の伝承が確立された。これらの地域から、ギリシア人はパルナサスを手に入れた、そしてほとんどの聖書的人物がそこから登場していた、その一部は彼らの時代の人々のなかに、一部は半神たちや、英雄たちとして登場し - ごく僅かな一部が – 前者の天文学的な二役として – 神話の中に登場した。伝説によればアブラムはカルディアのブラフマンの一人であり、彼の神々を否定し、後にカルデアのウル(『町』?)を離れ、ア-ブラムス*(12)(あるいはア-ブラハム)『非-ブラーマン』に名を変えた後、移住した。

 

 アブラムが『多くの国の父』になったことは、このように説明される。オカルティズムの学徒が自らのマインドに留めておかなければならないことは、古代万神殿(聖書のそれも含む)のすべての神と英雄は、物語として相互に同時進行する三つの伝記をもっている、各々は英雄という特徴で - 歴史的、天文学的、完璧に神話的 – ひとつに結びついている、そして最初の二つの真実を一つ、あるいはそれ以上の象徴に集約させることが、物語のなかの荒々しさと不調和を取り除くことに役立っている。地域ごとに、天文学的、霊的な出来事さえ一致するようにされている。

 

脚注ーーーーーーー

*(8) 彼の死の際に起こったとされる驚異的な記録は多い、だが私たちは彼の死という言葉に対する言い換えをむしろ言うべきである。 彼は他の人のように死ぬことはなかった、そして突然姿が消えてしまった。眩しい光が洞窟内を光輝で満たしている間に、彼の体が降りたのが見えた。この天空の光によって、いつもの暗い洞窟が薄暗がりへと変わったとき、ギンズバーグは『イスラエルの弟子たちはイスラエルの灯具が消滅したと知っていた』と唯一述べている。彼の伝記作者は、彼の葬式の準備の最中に天から声が聞こえたと私たちに話した、そして彼の埋葬時の棺が準備された深い洞窟に降ろされたとき、炎が上がり、力強い威厳のある声でつぎの言葉を発した、「彼は地震を引き起こした、 王国は揺らめく!」と。

 *(9)  ポーコックが、ドイツ語の「天」、「ヒンメル」は「ヒマラヤ」から派生した言葉だとしたことは全くの間違いではなかったであろう。ギリシア語の天(コイロン)とラテン語の「コエルム」の父はヒンドゥーのカイラサ(天)であることも否定できない。

 *(10) ポーコックの「ギリシアの中のインド」、そしてパルナサス山の由来を、ヒンドゥー教徒禁欲主義者の枝や葉で出来た小屋、半分の神社、半分の居住地のパルナサとする彼の主張を参照。

『「パー・オ・パミサス(バーミアンの丘)の一部はパルナッソスと呼ばれている。』 これらの山々はデヴァニカ(大地の神々)と呼ばれている。なぜなら、それらは『地の神々』と呼ばれる神々やデーヴァたちで満ちているからである。プラーナ文献によれば、彼らは葉で作られた、パルナサスと呼ばれる小屋やあずまやに住んでいた。 (パルナス)、 "p.302。

 *(11) まさにローリンソンは、初期の神話とバビロンとカルデアの歴史に関するアーリア人ヴェーダの影響を確信している。

 *(12) これはシークレット・ドクトリンによる肯定であり、受け入れられるか否かはどちらでも良い。 アブラム、イサック、ユダは、ヒンドゥーブラフマー、イクシャヴァークとヤドゥに酷似している。

 

つづく

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 ☆原書として、Kessinger Pub Co【Occultism Of The Secret Doctrine】 を参照しました。