【秘密教義のオカルティズム】 — 第25章 東洋と西洋のオカルティズム 他—(その1)
<初版1897年発行>
シークレット・ドクトリンの第3巻だといわれている「シークレット・ドクトリンのオカルティズム」の前書きで、アニー・ベサントは次のように記していたー
H.P.Bから私に与えられた原稿を、それぞれ別々の章として取り上げ、可能な限り順番に並べている。文法上の誤りの訂正と明らかな非英語的な慣用句を除いた以外、原稿はH.P.Bのものである。 それ以外の記述箇所はマークを付けて保存してほしい。いくつかのケースで、私が補った箇所があるが、そのような追加は[角括弧]で囲まれ、テキスト本文と区別できるようにした。・・・これらは秘密教義の第3巻の一部として出版するために私の手に渡された・・・この巻はH.P.Bによって残された論文を完成させる。・・・ (再掲載)
シークレット・ドクトリンのオカルティズム
(第3巻) ― 第25章
H.P.ブラヴァツキー 原著
アニー・ベサント 編著
<[角括弧]はアニー・ベサントによる追補>
<[各単語、他] はaquamarithによる追補>
第25章
東洋と西洋のオカルティズム
原初物質
大いなる深み
創世記における混沌
人類の聖書
混沌は神であり、しかもコスモスである
百八つ
◎東洋と西洋のオカルティズム
神智学協会のロンドン・ロッジのメンバーの一人は 1886年3月号*(1)のセオソフィスト誌上で、“太陽スフィンクス”に対する回答を、以下の通りに記した:
セオソフィストの紙面で解説された限りであるが、現在進められているオカルト知識の復活は、東洋の未だに到達していない認識の領域を、西洋の体系がいつの日にか、必ず実証することになるであろうとの確信をしている。
執筆者よりも有名なカバリストは、アメリカ合衆国で同じことを言っている、こういった誤った印象に苦慮しているのは、執筆者だけとは限らない。つまり東洋の教義の思想や真の哲学そして “認識の範囲” に関して、西洋のオカルティストが持っている知識は非常に表面的であるこということである。この主張は、2~3の事例を取り上げて、普遍的なへルメス教義に関する、ふたつの解釈の比較をすることで簡単に示される。私たちがそのような比較を出すことを怠ったために、仕事は不完全な状態にされてきたが、これからは、そういった比較はいっそう必要なものである。
◎原初物質
西洋の神秘家であるケニス・マッケンジーによって公正に紹介されている、現代のオカルト哲学*(3)で最も偉大な人物のひとりである故エリファス・レヴィを、私たちは取り上げる、エリファス・レヴィは、おそらくカルデア・カバラについて最も博識な解説者であるだろう、彼の教えを東洋のオカルティストのそれと比較するべきである。
私たちが期待したこと、それは15年ほど彼の弟子であった神智学者から借用した彼の未発表の原稿と書簡のなかに、彼が公開を望まないものを見出すことであった、しかし、私たちが見出したものは結果として、私たちを大いに失望させるものであった。そこでこれらの教えが西洋のあるいはカバラ的なオカルティズムの本質を含むものであるか、引き続き分析、比較していく。
エリファス・レヴィはそれを正確に教示したのだが叙事詩風修辞法的な言語表現であるために、初心者に対して十分明快であるとは言い難い。
永遠の生命は、交互に反転するフォース(力)の様相によって釣り合っている作用(動き)である。
しかし、彼はこの絶え間ない動きが実際に作用している諸フォース(諸力)と何も関係していないと、なぜ付け加えないのであろうか?彼は以下のように述べる:
混沌は、絶え間ない動きと原初物質のトフ-ヴァー-ボフ(Tohu-vah-bohu)であると、;
そして物質が“根源的” であるのは宇宙の新たな再建における始まりだけに限られるということを彼は付け加えてはいない;アルケミストによって、姿がない、とよばれる物質は永遠であり、不滅であり、始まりもなく、終わりもない。 それは、東洋のオカルティストによる、すべての永遠の根(Root)ヴェーダーンタ哲学者の言うムーラプラクリティと仏教徒の言うスヴァバヴァット;神聖なエッセンスすなわち質料である、これからの放射は周期的に、純粋な霊から粗雑な物質にいたる等級別の形に集められる;根(Root)あるいは空間はその抽象的存在としては、神そのものであり、表現できないほど偉大で未知なる唯一なる原因である。
彼にとってアイン・ソフは限りがなく無限であり唯一の統一さらに、パラブラフマンのように原因のない、ふたつと無いものなのである。アイン・ソフは不可分な点である、したがって、“どこにでもありながらどこにもない” 絶対的なすべてである。さらに、それは絶対的光であり”暗闇”でもある、7つの基本的宇宙本質の根(Root)でもある。だが、エリファス・レヴィは“暗闇は、地の表面上にあった” と簡単に述べただけで、(a)その“暗闇” のここでの認識が神そのものであることを明確に述べることが出来ずに、人間の思考(マインド)にとっての問題である唯一の哲学的解決を保留してしまった; (b)そして彼は不注意な学生が“地”と聞いて、それを私たち自身の小天体(地球)--宇宙の微小なもの--を意味すると信じることを許すのである、要するに、この教えはオカルト宇宙進化論を含まない、単なるオカルト宇宙地質学と、私たちの宇宙の微小な塵の形成だけに関係するというのだ、彼によって、このことはセフィロトの木において次のような扱いで示される:
神は調和であり、諸パワー (諸動力)の天文学であり世界の外的統一である。
(a)これは彼が宇宙外の神の存在を教えているが、コスモス(宇宙)と神聖な無限そして遍在といったそれらと、たとえひとつの単一な原子であっても無関係あるいは、外側ではありえないと制限して条件付けることを示唆する;(b)前-宇宙期間のすべて、すなわち顕現されたコスモスが意味したオカルトの教えのまさに根幹が省略されたのである、 彼は聖書と創世記の廃れた文字のカバラ的な意味だけを説明しており、スピリット(霊)やエッセンスには触れていない。こうした限られた教えでは、西洋のマインドの“認識の範囲” はそれほど拡がることはないだろう。
彼は僅かだが次のように語った、トフ-ヴァー-ボフの意味についてワーズワースは“めちゃくちゃな” と写実的に訳した、そしてこの語が宇宙を指し示すと説明した、彼はそのことに関して、後になって次のように教える:
暗い深淵 [混沌] の上に水があった、..地 [地球!] はトフ-ヴァー-ボフであり、混乱しており、暗闇が深淵の面を覆い強烈な息が水の上を動いていた、そのときスピリット(霊)が“光あれ” と叫んだ [?]、するとそこに光があった。
このように、地 [当然、私たちの地球] は地殻の激変の状態にあった、厚い蒸気は天空の広大さを覆い隠し、地は水に覆われ、そして烈風は暗い海を撹拌していた。やがてある瞬間に、平衡が姿を見せ、光が再び現れた;ヘブライ語の単語“ベレシェス(Bereschith)”(創世記の“はじめに”という言葉)はふたつから構成され、行為することにより明示されたという意味の動詞 “ベス、”であり、女性文字である; そして “レーシュ、”は“言葉”と命のことであり、数は20、disc(ディスク、(*訳者注・デシマル、おそらく10のこと))×2である;そして “アーレフ”は霊的本質であり 、ひとつのものという意味の男性文字である。
これらの文字を三角形に置くと絶対的な単一性が得られる、その数は数(複数)に含まれることなく、最初の明示を作成する絶対の単一性を持っている、それは2であり、そしてこれらの二つからは相対する [反対物]による類似に起因している調和によって結びついた2であるか、1だけを作る。これが神はエロヒム(複数)と呼ばれる理由である。
すべてのこのことは非常に巧妙であるが、極めて難解であり不正確である。フランスのカバリストの“暗い深淵の上方に水があった”という最初の文が影響して、正当な本筋から学生を引き離してしまう。これは東洋の弟子ならば一目で見抜くであろうし、世俗人であっても気がつくことがあるだろう。というのは、もしトフ-ヴァー-ボフが“下方”であり、水が“上方”にあるならば、このふたつはお互いにまったく別のものだからなのである。
脚注 ———————————————
*(1) 前掲書p.411
*(2) セオソフィスト誌上において、オカルト教義のあらゆる説明はされていた、しかし全体として説明が十分になされない場合には、主題が不完全であると言明するように常に気をつけた、そして執筆者が、これまで読者に対して、その教えを誤解させたことはない。東洋のオカルティストは、しばらく過ぎてから西洋の真のオカルティストに関する“認識の範囲”について知ることになった。従って、彼らは西側が弁証法(後に十分に西側で使われている)の推測のシステムとしてヘルメス哲学を所有している場合があると自信をもって主張する力を与えられている、しかし、それは完全にオカルティズムについての知識が欠如している。真の東洋のオカルティストは静かな状態や知られないことを保ち、彼が知っているものを決して発表しない、無分別の罰を非常によく知っているので、それについて殆どが語ることはない。
*(3) ロイヤル・メイソンの百科事典「セフィール・イェツィラー」参照
つづく
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訳者よりーこのシークレット・ドクトリン第3巻25章は、2016年12月に書いたSNS(mixi)日記を編集・修正してこちらにまとめたものです。
☆ブラヴァツキー夫人の著作が読みたいがために日本語訳にチャレンジしています。今回の第3巻第25章は、原書と加藤氏の翻訳を参考にして自分なり訳しました。加藤氏(1933生まれだそうです)の訳書を参考にすることで、誤った解釈等に気づいたりと、大変勉強になりました、本当に有難く思います。
☆原書として、Kessinger Pub Co【Occultism Of The Secret Doctrine】 を参照しました。
☆シークレット・ドクトリン第三巻 加藤大典訳 文芸社 を参照しました。
字句訂正・・・「トフヴァー-ボフ」を「トフ-ヴァー-ボフ」に訂正しました。(2019/1/21)