H.P.B.著作の和訳を試みる & 関連の話題 blog

ヘレナ・ペトロヴナ・ブラヴァツキー (1831年 – 1891年) は、近代神智学を創唱しました。・・・主に彼女の代表作である「シークレット・ドクトリン」の和訳を試みています。

 【秘密教義】 第2巻 第2部ー21章 エノイキオン — へノック(その1)   

<<1888年に出版された H.P.ブラヴァツキー の著作>>

   ーー創作したのは誰か?ーー

 

        シークレット・ドクトリン【秘密教義】 

         第2巻―第2部 ―21章  529頁~

                      H.P.ブラヴァツキー 著

                                                 aquamarith (ハテナ名)    訳

                    

  ◎創作したのは誰か?

 神秘的で普遍的な「エノク」の特徴を排除するならば、サタン的な神話の歴史的進展は完全とはいえないだろう、エノクはギリシャ語で「エノス」や「ハノック」、そして最終的に「エノイキオン」と呼ばれた。堕天使の最初の概念は初期のキリスト教の執筆者によって、エノクの書からとられていたのである。

 

 “エノク書”は、出所が不確かだと公に認められている。しかし、典拠が不明な文書とは如何なるものであろうか?この書の語源は単に秘密の本であり、法皇の保護の下にある寺院図書館の冊子に属するもの、聖職者に教授するものである、決して不敬なものではなかった。

 さらに、「聖書外典」の語源は、秘密、[クルプト(krupto)]、“隠れる”という動詞に由来がある。エノク書千里眼者の本)が現存した時代には、“本の都市”や秘密の著作物として保存されていた、本の都市すなわち古代キルヤテ-セフェル、(Kirjath-Sepher)は後に、デビル(Debir)となったのである。(ヨシュア15,15を参照)。

 

 この話題に興味がある作家 — 特にメイソンたち — の何人かは、エノクをギリシャのヘルメスや、メンフィスのトート、そして、ラテン系のマーキュリーまでも同一視しようと試みた。しかし、この方々全ては個々の互いに異なる存在である;専門的に — この言葉を使うならば、今日では、その意味はいっそう制限されたかもしれない — 彼らは、神聖な作家と同じ分野に属し、オカルトと古代の智慧の記録者たち秘儀参入者たちに属する方々である。

 

 クルド民族(イスラムコーランの章、スーラ19を参照。)からは、エドリスあるいは“学んだ”(秘儀参入した)と総称的に言われた、そしてエジプトの芸術の創案、科学、音楽や天文学の文書や書簡では“トート”の名前が突破口となる。ユダヤ人の間ではエドリスは、“エノク”になった、バル-ヘブラエウスの言説によれば、彼は“初めて文書を考案”して、書物、芸術と科学、惑星運行の体系を導入した最初の人物である。ギリシャでは、彼はオルフェウスと呼ばれている、このように様々な国で彼の名前は変化したのである。

 

 一年を365日という数の天文単位で表すように、7という数は、原初的な秘儀参入者*(1)それぞれに任務、品格、神聖な任務を付随させ関係付けられているが、それらはもちろん彼らの個性ではない。エノクは7番目の長老であり;オルフェウスは、7弦の竪琴(ホーミンクス)の所有主であり、秘儀参入の7重の神秘である。

 

 トートは、自身の頭に7-光線を放つ太陽の円盤をもち、太陽の小舟で365度、旅行して、4年度に一日 (突出)する。 最終的に、トート-ルヌスは7番目の神であり、週および7日の神である。 秘教的そして霊的にエノイキオンは“開眼の予言者”を意味する。

 

 エノクについての話をヨセフスが語った、すなわち、彼(エノク)がマーキュリーやセトの柱の下に貴重な巻物群あるいは書物群を隠しており、それはヘルメスの “「智慧」の父”彼が智慧の書を柱の下に隠したものと同じである、そして二つの石柱を見つけ、その上に書かれた科学についての記述を見つけたという話しである。

 しかし、ヨセフスは、イスラエルの不名誉な栄光の方向への絶え間ない努力にもかかわらず、彼は、その科学(智慧の)がユダヤ人のエノクに帰しているとして--歴史に記している。

 彼は彼自身の時代に、それらの柱がまだ存在していることを示している。それらがセトによって建造されたと彼は語った;その名の長老はアダムの伝説の息子、またエジプトの「智慧」の神ではなかったのであろう – それは、テト、セト、トート、タト、サト(Sat)(後のサタン(Sat-an))、ヘルメスといった全ての者のことである、そしてエジプトとバビロンの法皇の名前すなわち “蛇神の子たち”、“龍の子たち”は大洪水の前に知られていたのである、彼らはアトランティスの者たちの祖先である。

 

 ヨセフスが我々に語ったことは、それが妥当だとされたものを除いては、比喩的に真実でなければならない。彼の解釈によると、有名な2本の柱は象形文字で完全に覆われていて、発見の後、エジプト内にある寺院の最高秘密の一角で象形文字は転写され、再現され、知恵と卓越した学びの源になった。

 これらの2本の“柱”は“主”の命令によりモーセが切り取った2つの“石の表”の原型である。したがって、— オルフェウス、ヘシオドス、ピタゴラスプラトンのような — 古代の偉大な全てのアデプトや神秘主義者は、それらの象形文字から神学の原理を得ているということである、この認識は一方で正しく、他方では間違っている、すなわち正確さにおいて誤りである。大洪水ではない洪水に先行した、普遍的に知られている最後のすべての国家の芸術、科学、神学、特に哲学が、寓意的な堕落前の初期の「第三根本人種」から後の継承であり、「第四人種」、の原初の口伝から記録されたものであるとシークレット・ドクトリンは私たちに教える。

 

  したがってエジプトの柱、金属板、さらにはフリーメイソンの(Masonic)伝説の“白い東洋の斑紋石”であっても、— 本当の貴重な秘密が失われることを恐れてエノクは、大洪水の前に地球の内部にそれらを隠した、— それは単純で多少象徴的であり、原初的記録の原本からの寓意的な転写であった。現在非常に不完全な解説をしているが、“エノク書”はカルデア語であり、転写のひとつである。すでに述べているように、エノイキオンはギリシャ語で“内部の目”または「千里眼者」を意味する;そしてマソラ書の要旨の助けを借りれば、ヘブライ語で秘儀参入者と指導者の意味である。

 これは一般的なタイトルである、それに加えて、彼の伝説は幾多の預言者そしてユダヤ人と異教徒のものであり、細部の変更を伴っていても根本形式は同じである。

 

脚注 ———————————————

*(1)カノック、ハノック、またはエノクは、“人の子たち”エノス(創世記、第4章26参照)であるだけでなく“秘儀参入者”であり“教師”を意味する。

 

 つづく。

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☆個人的に興味があった章を記載しました、素人の翻訳で間違いもあるかと思いますので、不明な箇所は原著の頁を御覧ください。

☆このシークレット・ドクトリンの第2巻ー第2部ー21章(その1〜その4)の翻訳は、2017年4月に書いたSNS(mixi)日記を編集・修正してこちらにまとめたものです。

 

☆原書として、Theosophical University Press版 【 The Secret Doctrine Vol.2】 を参照しました。

☆参考文献【聖書】新改訳 日本聖書刊行会

 

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