H.P.B.著作の和訳を試みる & 関連の話題 blog

ヘレナ・ペトロヴナ・ブラヴァツキー (1831年 – 1891年) は、近代神智学を創唱しました。・・・主に彼女の代表作である「シークレット・ドクトリン」の和訳を試みています。

【秘密教義のオカルティズム】 ー 8章「エノク書」、エノクについて・・・その3 

  <原書・初版1897年発行>

 

ーーエノクは諸人種、を記しているーー

     

      シークレット・ドクトリンのオカルティズム

 

            (第3巻) ― 8章

                  

                    H.P.ブラヴァツキー 原著

                                                       アニー・ベサント   編著

                                                     <[角括弧]はアニー・ベサントによる追補>

       

 

◎ エノクは諸人種を記している

 「エノク書」の預言は実に預言的であるのだが、意図的に七つの「人種」のうちから五人種だけの記録を残していて、最後の二人種に関する全ては秘密にされている。 そして英訳の編集者による意見は次のとおりである。

  第92章は、エノク自身の時代から現世代を超える後の約1000年にも及ぶ一連の預言を記録している*(14)  

 

 だが、それは間違いである。後の“数千年”だけではなく、預言は我々の現人種の終わりまでの範囲に及んでいる。

 本当に真実なのは、

 採用されたキリスト教年代記の体系においては、1日が[時折]100年を、そして1週が700年を意味する。*(15)

 

 しかし(英訳された)これは、聖書の年代記を事実化あるいは理論付けする為、キリスト教徒によって採用された恣意的な気まぐれな体系であり、本来の独創的な思想を意味していない。“日”は「傍系諸人種」の劣化した時代を、“週”は「諸亜人種」を表していて、「根本諸人種」について英訳では発見されることさえない表現によって言及される。 さらに150頁の最後のところにある文章には次のように記されている:

 

 その後、4週目になると….. 神聖な者と高潔な者の幻は見られるようになり、世代からその後の世代へと交代は起こるだろう、*(16) だが、それは完全に間違っている。それは原典ではこうなっている:“世代その後世代へとの交代は、地球で起こっていた”、などなど、これは最初の人類が子孫を生み出した後に、正に人間的な方法で「第三根本諸人種」の期間に出現したのである、これはその意味を完全に変える変更である。

 

 それならば、エチオピア語文書の翻訳の既知の事実も、転写する過程で非常に不法に改変されていたに違いない、我々が知りえたことは、元来の「カルデア写本」で、将来起こるはずになっていた事についての記述が、すでに起こった事としての過去時制を用いた記述がみられた、確かにそれは預言ではなかった。

 “書から話す”とエノクが話し始めた時、彼は偉大な「先見者」から与えられた話を読みあげていた、預言は彼独自のものでなく「先見者」からのものであった。*(17)「エノク」または「エノキオン」は、“内部の目”または「先見者」を意味する。このように、あらゆる預言者とアデプトは、偽エノクになることなく、「エノキオン」と呼ばれる可能性はある。しかし、ここで、現在の「エノク書」を編集した「先見者」は、ある書から読み聞かせてながら、

次のように明確に示す:

 

 私は最初の週の七番目[肉体的生殖が始まった第三の「根本人種」の第一の「亜人種」の、「第七の分枝」いわば「傍系人種」]に生まれた。 しかし、私の後の、第二週[第二の「亜人種」]のときに、驚くべき非道な行為が起こる[むしろ、起こった]、そして、その週で最初の週は終わるだろう。そこでは人類は無事であろう。しかし、最初の週が完了したときは重大な不正が進行するであろう。*(18)

 

 そのように翻訳されても、それは意味をもたない。「秘教の文書」の立場では、「第三根本人種」の第二の「亜人種」のあいだに「第一根本人種」の終わりがくるだろう、その間人類は安泰であるということを単に意味するだけである、これらすべては聖書の「大洪水」について一切言及していない。詩句の10番目は、第六の週[「第三根本人種」の第六「亜人種」]のことを語っている、その際にそこにいる者すべては暗くなり、彼ら全員のハートは知恵を忘れ去り[神聖な知識は滅び去る]、そして、そのなかで、ある人間が上昇するだろう。

 解説者たち自身の何らかの謎につつまれた理由により、この“人間”は、ネブカドネザルを意味するとされた、実際彼は純粋な人間の「人種」(寓意的な表現では、生殖への降下以後の人種)に属していて、死にかけているデーヴァ(天使またはエロヒム)の智慧を永続的させる為に選ばれた、最初の「秘儀の司祭」なのである。

 

 彼は最初の“人の子たち”であり、「第三根本人種」のまさに最終末における「マーヌシ」(人々)は最初の人類学校の神聖な秘儀参入者たちに与えられた神秘の呼び名である、彼はまた“救世主”とも呼ばれた、なぜなら彼は他のすべての秘儀司祭たちと共に「選ばれたもの」と「完全なもの」を地質学上の大災害から救ったからである、そして最終末の地殻の激変が近づくなか性的な官能性によって原初の知恵を忘れた者たちを滅び去るにまかせた。*(19)

 

 そして、そのことが完了する間[“6週目”、または第六「亜人種」の間]、彼は支配地[地球の、あるいは当時の居住していた大陸の半分]の住居を燃やす、そして選ばれた、すべての根本の人種は分散させられるであろう。*(20)

 

 前述のことは、選ばれた秘儀参入者にはあてはまる、しかし選民だと仮定されたユダヤ人、バビロン捕囚にはまったく該当しないとするのがキリスト教神学者たちの解釈である。

脚注———————————————

*(14) 前掲書、p23

*(15) 上記引用文中に

*(16) 92.9

*(17) 前掲書、p92.4.

*(18) 前掲書、p92,4-7

*(19) すべての「根本人種」の終わりには、火による災いや地殻の激変や洪水がおこる、神聖な「大師の教え」のすぐ後に “生殖に堕ちた”第三根本人種の無価値なものたちが堕落した官能性に陥り滅亡した。その後、生じた第四根本人種は最後の大洪水の終わりまでその地にとどまった。(イシス・アンヴェールドの“神の子たち”593以下参照)

*(20) 前掲書、p92,20.

 

つづく。

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 ☆原書として、Kessinger Pub Co【Occultism Of The Secret Doctrine】 を参照しました。

   

 

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